東京高等裁判所 昭和27年(う)3491号 判決
〔抄 録〕
弁護人の控訴の趣意第一点及び被告人の控訴の趣意について。
原判決挙示の各証拠を総合すれば、被告人は原判示ホテルに支配人として勤務中、昭和二十五年十一月頃から昭和二十六年六月四日頃までの間同ホテルの使用人等が同所に来た進駐軍軍人からホテルの室代等として受領方を強制せられて已むなく預つた米国軍票を右使用人等から預つて保管していたこと、その軍票の総額は昭和二十六年六月二十日現在で五百弗に達していたこと、被告人は自己が右の事情で軍票を保管するに至つたことを自己の監督者たる西武鉄道株式会社の上司に報告して指示を仰ぐ等適当な措置に出でなかつたこと等の事実をそれぞれ認めることができる。そして、以上に徴すると、被告人が支配人として軍票を自己の手許に保管しておくほか他に適当な措置をとることができなかつたものとも解せられないから、かかる場合、被告人は前記のように自己の上司に報告して指示を仰ぎ又は当該公務員にその旨を届け出でる等臨機の措置をとるが相当であつて、被告人は右軍票を所持するについて犯意がなかつたとか、かかる情況にあつては何人がホテルの支配人であつても被告人と同様の行為に出でないことを期待することができないということを主張してその刑責を免かれることはできないものといわなければならない。従つて、原判決には何等各控訴の趣意において主張されているような違法な廉はなく、論旨はいずれもその理由がない。
註 本件は量刑不当で破棄。